賃料削減・減額交渉は実際のところどうなのか

会社を成長させるためには、売上げを伸ばすのと同時に経費を削減していくことを考えなければなりません。
実際様々な企業は、仕入れコストを見直したり一部の業務を外部に委託したりすることによって少しでも多くの経費を削減しようとしています。

会社の経費には大きく分けて2種類、「変動費」と「固定費」があります。
特に、売上げに関わらず毎月確実にかかってくる「固定費」に関しては、できるだけ安く抑える必要があります。
その経費の中でも比較的大きなウエイトを占める「賃料」を安くすることはできるのでしょうか。

賃料削減請求による減額の魅力

賃料を削減するとなると、「現在よりも賃料が安いテナントに移転する」「現在借りているテナントの賃料を減額してもらうよう交渉する」の2択です。
移転するには原状回復費用や仲介手数料など様々な費用がかかる一方で、賃料減額交渉は比較的手っ取り早く賃料を削減する非常に効率の良い手段です。

会社経営において人件費や原価に次いで大きなウエイトを占める傾向にある「賃料」は売上に関わらず毎月かかる固定費ですので、その幅が減るのはシンプルに魅力的です。

また、効果の高い経費削減手法としてはリスクが低いという点も挙げられます。
例えば経費の費目のうち人件費を削減しようとする場合、給与引き下げやリストラをするしかありません。
そうすると経営陣の求心力は確実に落ちてしまいますし、そういった話が外部に漏れれば会社の信用を損なうことにもなりかねません。
その点、賃料減額交渉をして賃料削減をすることができれば、そのようなリスクを冒すことなく経費削減をすることができるのです。

また賃料減額交渉に成功した場合、現在の住所のままで賃料だけが安くなるため、移転に伴う莫大なコストがかかるということもありません。
住所がそのままということは交通の便も人通りも変わらないということですので、既存客が離れてしまうといったこともありません。

交渉による賃料削減は、会社が大きなリスクを負うことなく固定費を削減することができる、経営陣にとって非常に嬉しい経費削減手法なのです。

賃料減額請求は法律上認められている

ただここで、多くの経営者様が疑問に思われることがあります。
それは「そもそも賃料の減額なんて可能なのか」ということです。

日本においては「入居したときに契約書を交わした賃料を安くできるわけがない」という意識がまだまだ根強く残っています。
確かに、一昔前の賃貸借市場においては、「賃料」というと上がることはあっても下がることはない、というのが常識でした。

しかし、実は賃料減額請求・交渉は、法律上認められています。(貸主側からの賃料増額請求も同様です)

物件を借りるとき、必ず賃貸借契約を交わすわけですが、賃貸借契約には「借地借家法」という法律が適用されます。
この借地借家法32条では「貸主・借主双方の協議の上で賃料の増減額請求をすることができる」と規定されています。
つまり、借主による賃料減額請求は正当な権利として認められているのです。

なお、この賃貸借契約には「契約期間」があり、期間が過ぎれば契約更新をする必要があります。
この契約更新の際、物件の借主にとって少々心配なのが、貸主からの賃料増額請求です。
実際、少し前までは、契約更新をする度に賃料が値上げされる、なんて話も珍しくはありませんでした。
貸主による賃料増額請求もまた、同様に認められている正当な権利だからです。

貸主が強すぎた時代は終わり、現在では貸主(物件オーナー)との間で賃料減額交渉が当たり前のように行われています。
特に大手企業やスーパーマーケット、外資系企業、小売企業などの中には、2-3年に1回くらいのペースで賃料減額交渉を行っているところもあります。

ところが中小企業の間では、交渉によって賃料を削減することができるという事実がまだまだ知られていないようです。
実際、ある機関により実施された調査によると、賃料減額交渉を行う会社に占める中小企業の割合は、なんと10%以下でした。(中小企業は全企業の99.7%を占めます)

契約種類や条項が原因で賃料減額交渉ができない場合を除き、ほとんどの賃貸借契約においては賃料減額交渉をする権利があるのです。

減額交渉への抵抗感

いくら法律で認められた正当な権利があると知っていても、賃料に関しては一切手を付けていないという企業もたくさん存在します。

そしてその理由として挙げられるのが、「賃料削減のために交渉をすると大家さんとの関係が悪化してしまうのではないか」という不安感や「減額請求なんてこと、してもいいのか」という、テナントを貸してもらっていることに対する“義理人情”といったものです。

確かに、既に安く借りられているのにさらに減額をするのはおこがましいと感じられても仕方がありません。

しかし、周辺状況の変化や景気の変化、年数の経過などによって、土地や物件の価値が変動しているケースは多くありますし、最初から通常より高い価格で借りられている可能性も十分にあります。

そういった場合、適正価格への見直しを要望することは、なんら不自然なことではありません。

賃貸借契約書を確認してみよう

今お手元に賃貸借契約書がある方は、その契約書の賃料に関する条項を一度ご確認ください。

条項の中に「賃料改定」に関する取り決めはありませんか?
そしてその取り決めの中に「賃料は双方の協議の上で改定できる」と書かれてはいませんか?

もし書かれていたならば、契約上も借主側に賃料減額交渉をする権利があることが正式に認められているということです。

なお、何も書かれていない場合でも、基本的に請求可能です。

賃料削減交渉の手順

周辺を含む土地や建物の状況・評価額や経済の変動など様々な要素を鑑みた上で、具体的な減額希望額やその開始時期などを盛り込んだ賃料減額申込書を作成し、貸主側に提出します。

この際、口頭のみで伝えると内容が記録に残らず、のちのち双方の認識の違いが発覚するなどしてトラブルになる恐れがありますので、基本的にはまず書類という形で提出することをお勧めしています。ただし、常にその限りではなく、貸主の属性によって判断する必要があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

その上で話し合いの場を設けます。デリケートなことですので、基本的には対面での話し合いになるでしょう。
貸主としても利益・収入はもちろん削りたくないので、様々な情報を集めて入念に準備した上で臨みます。

本当に減額してくれるものなのか

「本当に減額してもらえるのか」と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、実際のところ減額が成功するケースは増えています。

テナント需要が高かった頃であれば減額請求をしたところで「減額してほしいならどうぞ出ていってください」と強気に出られるのが専らでしたが、近年では市場が冷え込み、なかなか借り手がつかず困っている物件オーナーの方が圧倒的に多いからです。

借り手がつかなければ、貸主側の利益はゼロどころかむしろマイナスです。(借り入れ・税金・設備維持・広告など)
賃料を理由に借主に出ていってしまわれて、次の借り手がいつ見つかるかも分からないとなれば、多少賃料の値下げをしてでも今の借主に借りつづけてもらう方が安定していて合理的であると判断する貸主が増えてきています。。

やり方さえ間違えなければ、貸主と交渉して賃料削減を勝ち取ることは十分に可能なのです。

最初から諦めることなく、賃料減額の可能性に目を向けてみてはいかがでしょうか。

減額交渉できないケースもある

ただし、賃料減額交渉をするのが難しい、あるいはできないケースは確かに存在します。

・定期借家契約書に賃料改定不可と記載されている場合
・入居1-2年未満である場合
・すぐに借り手が付くような人気物件である場合
・現在の賃料が周辺の類似物件の賃料よりも既に安い場合
などがこれに当たります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

また、交渉のタイミングにも注意が必要です。

逆に言うと、現在借りている物件がこれらに該当しない場合には、賃料減額交渉をする余地があるということです。

賃料減額を勝ち取るのは難しい?

以上、賃料減額交渉によって賃料を削減することは現実味のある行為であることが分かっていただけたと思います。

しかし、その事実自体は知っていても「難しそうだから手を付けられない」「どう交渉すればいいのか分からない」という方も多いようです。

確かに、交渉自体はできたとしても、実際に希望の減額を勝ち取るのは簡単なことではありません。
特に不動産取引や賃料削減に関する知識があまりない方の場合、日頃から不動産業務に携わるプロと対等にやり合うことになるのですから当然です。

交渉に臨むにあたっては、様々な準備が必要となります。

  1. 謄本を取得し、減額に応じられるだけの余裕が貸主側にあるかどうか調査する。
  2. 各種資料を集める
    土地の価格を算出するための資料(土地白書、基準地価・公示価格、路線価、固定資産税の評価額)
    建物の価格を算出するための資料(固定資産税の評価額、減価償却後の残存価格)
    経済事情の変動をみる資料(全国企業倒産白書、国民生活白書)
    土地・建物の税額と評価額を確認するための資料(公課証明)
  3. 上記以外も含む様々な資料を分析し、交渉資料の作成を行う

上記はその例ですが、高い賃料削減効果を実現するためには、現在借りている物件の貸主あるいは管理会社との実際の交渉の場における経験・テクニックだけではなく、下準備のための時間・労力も必要になってきます。

時間・労力をかけた結果、減額を勝ち取れなければ大きな損失です。
また、減額できたとしても、その下がり幅が十分なものでなければあまり意味はありませんし、期間限定の減額になってしまったり、減額の代償として不利な条件をつけられる可能性もあります。
かといって、間髪入れずに再度交渉しても、貸主の心証を悪くするだけで取り合ってもらえません。

外部委託も選択の1つ

とはいえ、減額できる可能性があるにも関わらず「難しそう」「分からない」という理由だけで、月々自動的に固定費が飛んでいくのを黙って見ているのは非常にもったいないことです。

そのような方は、賃料削減コンサルティングのご活用を検討してみてはいかがでしょうか。
「そもそも該当する物件の賃料は適正なのか」についての調査に始まり、交渉にあたって必要な準備などを一気通貫でサポートしてもらうことができるのです。

こういった業者のほとんどは成果報酬制ですので、減額できなかったとしても費用はかからないので、骨折り損になることもありません。また、本来の業務に集中することができるので、社内のリソースを余分に割く必要もありません。

私たちレントプロも、これまで数多くの企業様の賃料減額に関わってきました。そのほとんどが銀行から紹介という形で進めさせていただいておりますが、コンスタントにご紹介いただけるのも、お客様の期待に応えつづけることができているからだと思います。

少しでもご興味のある方は、ぜひ以下のページも覗いてみていただけましたら幸いです。