調剤薬局の動向と賃料削減の重要性

調剤薬局業界は、調剤報酬の改定や薬剤師不足など課題が多くあります。また、ネット通販大手のAmazonが処方薬販売への参入を検討しているとの報道もあります。今後の動向が気になる調剤薬局の業界について説明します。


調剤薬局業界の現状

調剤薬局は、医療機関の処方箋に対応するだけでなく、老人ホームなどの介護施設や在宅患者への対応もしています。また、他の薬局との薬の重複や飲み合わせのチェック、薬を飲み続けて副作用はないかのチェックなど、患者の服薬に関して様々な役割を担っています。

厚生労働省が公表している調剤薬局数の推移をみると、年々増加傾向にあり2020年には61,000件まで店舗数が増えています。最近では一般用医薬品、日用品などを扱うドラッグストアに併設されている調剤室も増えてきました。

2022年4月1日にリフィル処方箋が導入されると、医師の判断により症状が安定している患者に対して、1回処方箋を交付すれば一定期間内に3回まで繰り返し使用できるようになりました(一部の薬は除きます)。これまでは継続治療であっても都度診察を受けた上で処方箋を発行してもらう必要がありました。これにより患者の通院負担軽減はもちろんですが、受診回数を減らして医療費を削減することが狙いです。

最近開始された制度ですが、2023年1月26日より従来の紙による処方箋から、電子処方箋が利用できるようになりました。電子処方箋の場合、オンライン上で服薬の説明を受けることができ、処方薬は宅配で受け取ることができるようになった為、今までの様に薬局で受け取る必要がありません。また、患者の同意を得て過去の薬剤情報を医師・薬剤師と共有できるようにもなりました。これにより、投薬ミスを減らすことができるため業務を効率化することができます。そのような中、ネット通販大手であるAmazonが参入するとの報道もされています。公式発表はありませんが、電子処方箋の運用開始はこのような新たな動きが調剤薬局業界へ大きな契機となるでしょう。

厚生労働省 薬局薬剤師に関する基礎資料 参照


調剤薬局が抱える課題

「調剤報酬改定」

調剤報酬は「薬剤料」「調剤技術料」「特定保険医療材料料」「薬学管理料」の4つから構成され、報酬額は厚生労働省が定める「調剤報酬点数」によって決められています。

「調剤技術料」の中に含まれる「調剤基本料」は、医薬品備蓄の体制設備に関する点数で、薬局経営の「効率性」を踏まえて設定しています。この調剤基本料は、立地や調剤薬局の規模によって違いがあり、多くの患者に利用していただける門内薬局や門前薬局では効率的に経営ができると国が見解し低い点数となっています。一方、街なかにある薬局(いわゆるかかりつけ薬局)は、地域に根差し住民の健康をサポートする役割が求められているため、コストも大きくなります。そのため、国から高い点数がつけられるようになりました。

薬剤師は現状、対物業務が中心となっています。今後対人業務へとシフトしていく必要があるため、対物業務に対する「調剤技術料」は減少傾向にあり、対人業務に対する「薬学管理料」は増額傾向にあります。このように薬剤師が効率的に業務できるように、報酬基準もよりシビアになっています。

「薬価改定」

薬価とは、医療用医薬品の価格のことです。以前、薬価の改定は2年に1回の頻度で行われていましたが、2021年度から中間年度改定も開始された為、実質毎年行われています。そしてこの改定のたびに薬価は原則引き下げられます。厚生労働省によると薬価改定の目的は、「市場の実勢価格を適時に薬価に反映して国民の負担を抑制するため」としています。改定のたびに薬価が引き下げられることで、調剤薬局の収益である「薬価差益」が減るため、調剤薬局の経営は厳しい状況が続いています。

「薬剤師不足」

近年、調剤薬局店舗の多様化が進んでおり、病院やクリニックの近くで運営する門前薬局やドラッグストア・コンビニに併設されている調剤室など、増加する調剤薬局に対して薬剤師の数が追い付いていないのが現状です。そのような状況で資格は持っているも薬剤師の業務には就かない「潜在薬剤師」も一定数います。薬剤師に限らず「結婚」「出産」を機に仕事を離職してしまうケースはあると思いますが、これは薬剤師にも言えることだと思います。また、薬剤師の業務は医薬品の調剤や患者とのやり取りだけでなく、医療機関との調整、書類作成なども含まれ負担の大きい仕事です。そのような環境から離職を余儀なくされることもあるでしょう。

「後継者不足」

薬剤師の高齢化により、事業自体に問題がないにもかかわらず、後継ぎがいないことを理由に廃業してしまうケースがあります。このようなケースでは事業買収が活発になるのではないでしょうか。                             

「医薬品不足」

医薬品の供給不足が深刻な問題となっています。相次いで不正が発覚したジェネリック医薬品メーカーの影響により医薬品の供給不足が続き、各地の薬局では医薬品を分け合い、場合によっては別の薬局に行ってもらうなど対応に追われています。医薬品不足の状況が2、3年は続く見通しであり、しばらくは各地の調剤薬局では対応に追われることでしょう。


今後の運営に必要なご提案

様々な課題がある調剤薬局ですが、薬価改定・調剤報酬の引き下げに対抗する手出てとして、まずはコスト削減に取り組まれてはいかがでしょうか。人件費、賃料、リース代はどの調剤薬局でも大きなウエイトを占めるコストです。その中でも賃料は削減できる可能性が十分にあります。賃料を減額させるにあたっては、貸主サイド(不動産業者・大家)にとって納得のいく十分な材料を用意して協議に臨まなければなりません。

下記ページでは賃料削減・減額交渉の全体像、及び賃料減額協議が困難なケースや適切なタイミングについて説明しています。

ぜひ、一度ご覧になり賃料削減というご選択を検討してみてはいかがでしょうか。