賃料減額交渉のリスクとして懸念される2つのポイント
日本には昔から「賃料は交渉の寄りがない」とか「賃料は上がることはあっても下がることはない」といった認識があります。
実際、賃料削減のための交渉は貸主側(大家さん)に対して失礼な行為である、という考えをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
また、賃料削減のための交渉をするとそれが原因で「退去時の原状回復費用が高額になってしまうのではないか」とか「貸主側との人間関係が悪化してしまうのではないか」といった不安を抱えている方もおられます。
こちらについて、実際のところどうなのか見ていきましょう。
原状回復費用
確かに賃料を減らしてもらう場合、減額した分の賃料を原状回復費にこっそりと上乗せされてしまいそうで、不安になってしまいますよね。
賃料を安くしてもらうことによって毎月の支払いを抑えることができても、それが原因で退去時に多額の費用がかかってしまうというのでは、あまり旨みがないばかりか、むしろマイナスになってしまうのではないか、ということになってしまいます。
しかし、賃料を減額してもらったからといって原状回復費が高くなるということはまずありません。
そもそも原状回復費とはその名の通り、賃借していた物件を“原状に回復する”ためにかかる費用のことですので、この原状回復費に交渉によって減額した分の賃料を上乗せする、なんて理屈が通るはずがないのです。
中には「賃料を安くした分、退去時の原状回復費用に乗せてしまえ」と高額な原状回復費を請求してくる方もいるかもしれませんが、そういった場合には毅然と対応することによって、本来必要な原状回復費のみの支払いで済ますことが可能です。
賃料減額請求をしたことによって借主が金銭的に何らかの不利益を受けるということはありませんので、ご安心ください。
貸主との関係悪化
「賃料減額の要請をすると物件オーナーとの関係が悪化するのではないか」
「賃料減額交渉に成功したとしても、その後このテナントに居づらくなるのではないか」
といったご不安をお抱えの方もいらっしゃると思います。
しかし、そのリスクを過度に心配する必要はありません。
現在は貸テナントや貸事務所が供給過多状態となっており、不動産市場は借り手市場になっています。
それは、一等地に立っているビルが次々に取り壊されてコインパーキングができている現状を見ても明らかです。
また、以前に比べて賃料減額交渉は珍しくもなくなってきているため、「ついにうちにも来たか」と、そこまで深刻に考えない貸主も増えてきています。
そのため、より安い賃料のテナントに移転されるよりは、多少賃料を下げてでもこのまま借り続けてもらった方がいい、と考える貸主は多くなってきています。
借地借家法では賃料減額要請は正当な権利として認められています。(例外あり)
一定の前提のもとにきちんと交渉を進めていきさえすれば、賃料減額交渉をすることによって借主に何らかの損失が発生するということはまずありません。
ただし、交渉を成功させるには、要望・交渉にあたって綿密な準備をする必要があります。
より確実な賃料削減に向けて
しかし当然ながら、交渉の仕方や態度、手続きの進め方や交渉前までの貸主側との関係性によっては、交渉の成否に関わらず関係を悪化させてしまう可能性は十分にあります。
また、交渉にあたっては周辺相場や適正賃料の調査、資料の作成や分析など、入念な準備が必要です。
時間・労力をかけて交渉に臨んだ結果、減額という結果になったとしても、その幅が小さかったり期間限定であったりする可能性や、借主にとって不利な条件を代わりにつけられてしまう可能性もあります。
より確実に、より大きく減額を勝ち取りたいという方は、交渉サポートを外部委託するという選択肢もぜひ検討してみてはいかがでしょうか。