新型コロナウイルス感染症が賃料に与える影響

【コロナと賃料について】

新型コロナウイルス感染症に伴い、飲食、物販、サービスの店舗が相次いで閉鎖、営業時間短縮が進んでいる状況下で、店舗を運営している事業者の方は人件費の削減や経費の圧縮を行っていますが、売上高減少に全く追いついていない状況です。

変動費につきましては、売上高減少に伴い減少していきます。固定費においても、社員の一時休職は60%保証の制度があり、ある程度人件費についても対応が可能です。一方、同じ固定費である支払賃料については、店舗を閉鎖しても同じ額を支払う義務があり店舗経営者の大きな負担になっています。

弊社は賃料コンサルティングを行っており様々なエリアの賃料相場に精通していますが、首都圏のターミナル駅周辺の飲食店では坪単価20,000円~40,000円程度、坪面積60坪~80坪程度が中央値となっています。
そして例えば坪単価30,000円、坪面積70坪の物件では毎月2,310,000円(税込)、年間27,720,000円(同)を支払っています。
こちらの店舗で売上が立たない場合、この賃料はそのまま損金となります。

飲食店の平均営業利益率は7%程度ですのでこちらの年間賃料27,720,000円を営業で取り戻すには7%で割り戻した396,000,000円の売上が必要となります。(本部経費、支払利息を勘案するともっと売上高を計上する必要ありますが省略します)

非常に困難な状況というのはご理解いただけると思います。

【賃貸人と賃料引き下げについて】

非常に厳しい状況に対して、賃貸人サイド(貸し手側)に対する動きは以下の通りです。

◆国土交通省
2020年3月31日に賃貸人向けに賃料について柔軟な措置を取るよう依頼
⇒あくまでも要請の範囲なので法的拘束力なし。

◆大手SC
テナント賃料を一部減免するとの報道あり。SCの賃料形態は売上連動となるケースが多いですが、売上にかかわらず支払う「最低保証分」の賃料を減免するケースもあるようです。
大手SCにおいて賃料は基本的に減額不可ですのでそれ自体は驚きですが、一律に応じるのは一部にとどまっており個別協議が必要となるケースが多いです。

◆その他大手
駅ビルや財閥系大手などが、賃料支払に苦慮するテナントに対して、支払一部猶予や減免を行っています。ただ、減額幅や期間は限定的であり収益改善には程遠い状況です。

◆中小不動産
不動産業者のうち、6割超は中小企業になります。こちらは資金的に余裕なく、全ての賃料引き下げに対応するのは難しい状況。一方で、賃料減額に応じなければ賃借人(テナント)の撤退につながる可能性もあるため苦慮しています。

◎減額要望
賃借人から賃貸人宛にコロナ影響による減額要望が殺到しています。
こちらについては、減額期間を限った措置が多く見受けられます。
この経済環境下にあって賃料改定は賃借人の当然の権利として存在するものの、賃貸人にそれを受ける義務はありません。
需要の低い立地物件であれば減額しやすい傾向にありますが、需要のある立地物件では、単純に減額要請しても成功率は低く、ヒアリングしている限り、成功率は20%程度に留まるようです。
賃貸人も賃料減額の要望が殺到しているため、単純な減額要望に応えることはできない状況にもあります。

【弊社対応について】

弊社では、賃料コンサルティングを10数年行っており、特に商業施設、オフィスの相場に精通しています。賃料減額を勝ち取るためには、コロナの話だけではなく、物件相場や賃貸人状況も踏まえた対策が求められます。
コロナの影響もあり、弊社にも問い合わせを多くいただいておりますが、精査しつつ状況対応しております。

賃料減額についてはこちらの記事をご覧ください。

最後に、新型コロナウイルスの一刻も早い感染拡大の収束と、現在闘病されている方々が早期に回復されますことを心よりお祈り申し上げます。