賃料減額交渉がしやすいタイミングはまさに今

突然ですが皆様、会社の事務所や店舗として借りている物件の賃料減額交渉について検討されたご経験はありますか?

仕入れ先の変更や交渉による原材料費の削減など、経営努力により様々な経費節減をされている方であっても、賃料の減額についてはあまり考えたことがなかった、という方も多いのではないかと思います。

確かにこれまでは、賃貸物件の賃料というとある種の「聖域」のようなもので、高くなることはあっても安くすることはできない、というのが共通認識でした。実際、いくらでも借り手がいたようなバブル期には、契約更新のたびに家賃が値上げされていた、なんてことも普通でした。

しかし時代は変わりました。

賃料減額交渉の成否に大きく影響する要素に「景気」があります。
景気が良いと、賃貸物件への需要が大きくなり、地価が上がります。

そうすると、貸主(物件オーナー)としては賃料減額交渉に応じなくとも希望金額で物件を借りてくれる契約者を見つけやすくなるので、交渉自体に応じてもらいにくくなります。
つまり、好景気は賃料減額交渉の妨げとなってしまうのです。

そして現代では以前に比べて随分と賃料減額交渉がしやすくなってきています
その背景にはやはり、テナント等の空室率の上昇があります。

景気の悪化に伴い、これまでは特に宣伝をしなくとも入居希望者が殺到していたような物件ですら空室化がどんどん進み、遂にはその管理を維持することができないビルも出てくるようになりました。
繁華街の一等地でかつては入居戦争が繰り広げられたようなビルも、いつの間にか解体されてコインパーキングになっていた、なんてことも珍しくありません。

ビル等の空室が目立ち、そのような状況になっているということは、それだけ新たな借り手を見つけるのが難しい状況であるということです。
つまり、時代の変化とともに賃貸借市場は、貸手市場から借手市場へと変化していったというわけです。

それに伴い、賃料減額請求に対する貸主側の抵抗感や嫌悪感は薄れつつありました。
大手企業等による賃料減額訴訟が増えたことや、高い賃料のままでは借り手がつかなくなったという時代背景もあって、貸主側としても、賃料減額交渉をされることがいわば「想定の範囲内」となってきていたのです。

ただしこれはあくまで全体的な傾向です。
近年の我が国の景気に目を向けてみますと、近年は東京オリンピック開催決定もあり、首都近郊を中心に徐々に回復していました。
東京を中心に地価は上昇し、オフィスビルやマンションの空室率も低下傾向にありました。
つまり、かつてほどではないにしても貸主が強めの状態がしばらく続いていました。
その状態では、交渉には応じてもらいにくく、賃料はなかなか下がりません。

しかし、2020年3月頃に始まった新型コロナウイルス感染症の蔓延によって景気が再び悪化し、今や空室率は上昇傾向、地価は下落傾向にあります。
テナント等の貸主としては、交渉に応じずに今の契約者を手放す結果になるよりは、少し賃料を下げることでその物件を借りつづけてもらえるのであればその方がありがたいと考えて、賃料減額交渉にも応じてくれやすくなっているのです。

例えば毎月20万円の賃料を16万円に減額した場合、貸主としては年間48万円の損失となりますが、賃料を理由に契約者が退去してしまい、その後入居者が一向につかなければ、年間240万円の収益がゼロになってしまいます。
その物件の賃料が適正賃料よりも高いのであれば、「新しい借り手を呼び込むために値下げをするくらいだったら、他にも費用はかかってしまうことも考えると今の借主の賃料を下げておいた方がよさそうだな」と判断するかもしれません。
つまり、多少賃料を下げてでも物件を借り続けてもらった方が貸主としても得ということにもなりえるのです。

新型コロナウイルスの騒動がいつ終焉を迎えるのかは定かではありませんが、いずれ景気は回復に向かいます。
賃料の減額交渉は今後、時間が経てば経つほど困難になっていく可能性があるということになります

契約更新前など賃料減額交渉しやすい時期等を勘案すれば、今後賃料削減のチャンスがどんどん少なくなっていくといえるでしょう。
賃料改定の機会を損失しないためにも、まさに今、いち早く行動を起こすことが重要なのです。