オフィス移転のコストを劇的に下げる?「居抜き退去」のメリット・デメリットと成功のポイント
オフィスの移転において、多くの担当者を悩ませるのが「退去費用」です。特に、借用したオフィスを入居時の状態に戻す原状回復費用は、想像以上に高額になるケースが少なくありません。
昨今、このコストを削減する有力な手段として注目されているのが「居抜き退去」です。
飲食店などの店舗においては居抜きで退去することは一般的ですが、オフィスにおいては前テナントの内装が自社のイメージに合わなかったり、レイアウト変更が難しいなどの理由からオフィスを居抜きで退去することは今までは一般的ではありませんでした。
本記事では、オフィス移転の新しいスタンダードになりつつある「居抜き退去」について、その仕組みからメリット・デメリット、そして失敗しないための注意点までを徹底解説します。
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そもそもオフィスの「居抜き退去」とは?
通常、賃貸借契約では、退去時に内装や設備をすべて撤去し、何もない状態(スケルトン、または原状)に戻して貸主に返却する義務があります。これを「原状回復」と呼びます。
対して「居抜き退去」とは、設置したパーテーション(間仕切り)、会議室、執務スペースの内装、照明、空調設備、場合によってはデスクやチェアなどの什器を残したまま退去する方法です。
次の入居テナントがその内装や設備をそのまま引き継いで使用するため、退去する側は原状回復工事を行う必要がなくなります。
オフィスを「居抜き退去」する3つのメリット
なぜ今、「居抜き退去」が注目されているのでしょうか。最大の理由はコストですが、それだけではありません。
原状回復費用の大幅な削減
最大のメリットは、やはりコスト削減です。 オフィスの原状回復工事は、通常「B工事(指定業者による工事)」となることが多く、相場よりも割高な見積もりが出がちです。居抜きで退去できれば、解体工事や廃棄処分費が不要になるため、数百万円から、規模によっては数千万円単位のコストカットが実現します。浮いた予算を新オフィスの内装費や採用費に回せるのは大きな魅力です。
二重家賃(ダブルレント)の期間短縮
通常の退去では、解体工事期間中(約2週間〜1ヶ月)も家賃を支払う必要があります。 居抜き退去であれば、解体工事が不要なため、退去ギリギリまでオフィスを使用することができます。新オフィスとの家賃重複期間を最小限に抑えられ、キャッシュフローの改善に寄与します。
環境保全(SDGs)への貢献
内装を解体すれば、大量の産業廃棄物が出ます。まだ使える壁やカーペット、設備を廃棄せずに次へバトンタッチすることは、廃棄物の削減に直結します。特に「目標12:つくる責任 つかう責任」などに関連し、居抜き移転を通してSDGsへの取り組みを具体化し、社会的責任を果たすことができます。
知っておくべき「居抜き退去」のデメリット
メリットが大きい反面、居抜き退去にはリスクやデメリットも存在します。これらを理解しておかないと、移転計画が狂う可能性があります。
次の入居者が決まらないリスク
居抜き退去は、「その内装をそのまま使いたい」という次のテナントが見つかって初めて成立します。もし退去期限までに後継テナントが決まらなければ、最終的に自費で原状回復工事を行わなければなりません。 「居抜きでいけるだろう」と高を括って予算を組んでいると、土壇場で数百万円の追加出費が発生するリスクがあります。
貸主(オーナー)の承諾が必要
賃貸借契約書の多くには「原状回復義務」が明記されています。居抜き退去はあくまで特例措置です。 ビルオーナーによっては、「管理上のトラブルを避けたい」「ビルのブランドイメージを守りたい」等の理由で、居抜きを断固拒否するケースもあります。
清掃や補修費用の発生
「そのままで良い」とは言え、あまりに汚れていたり破損していたりする場合は、最低限のクリーニングや補修を求められることがあります。原状回復よりは安価ですが、費用が「ゼロ」になるとは限らない点に注意が必要です。
失敗しないための注意点と進め方
オフィスの居抜き退去を成功させるためには、段取りが命です。以下のポイントを意識して進めましょう。
スケジュールには余裕を持つ
通常の解約予告(6ヶ月前)よりもさらに前、移転を検討し始めた段階(8ヶ月〜1年前)から動き出すのが理想です。 後継テナントを見つけるための募集期間(リーシング期間)を確保する必要があるためです。時間がなければ、入居者が見つからず原状回復せざるを得なくなります。
貸主・管理会社への早期相談
勝手に次のテナントを探してくるのはNGです。まずはオーナーや管理会社へ「居抜きでの退去を希望したい」と打診し、承諾を得る必要があります。 その際、「廃棄物を出さないエコな退去であること」や「内装のグレードが高く、ビルの価値向上につながること」をアピールすると良いでしょう。
「譲渡資産」の明確化
何を残して、何を持っていくのかのリスト(資産譲渡リスト)を明確に作成しましょう。 「会議室のプロジェクターは残ると思っていたのに無かった」「不要なロッカーが残されていて処分に困った」といったトラブルは、入居後のクレームに直結します。 「造作譲渡契約書」を締結し、責任の所在をはっきりさせておくことが重要です。
専門業者の活用
自力で後継テナントを探すのは困難です。オフィス移転の知見があり、かつ居抜き物件に強い仲介会社や、居抜き専門のマッチングサイトを活用しましょう。 彼らは「どのような内装が人気か」「適正な譲渡価格(あるいは無償譲渡)」の相場を熟知しています。
まとめ:居抜き退去は「早期判断」がカギ
オフィスの居抜き退去は、退去する側、入居する側、そして環境にも優しい移転手法です。特に、内装にお金をかけたこだわりのオフィスであればあるほど、その価値を引き継ぎたいと考える企業は現れやすくなります。
しかし、成功させるためには「オーナーの合意」と「マッチングの時間」が不可欠です。
もし現在、オフィスの移転を検討されているのであれば、解約通知を出す前に「今のオフィスを居抜きで引き継ぐことは可能か?」を一度検討してみてはいかがでしょうか。その一つの選択が、数百万円のコスト削減につながるかもしれません。
弊社では原状回復費用の削減や居抜き退去に関するご相談を受け付けております。
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