居抜物件を活用した出店戦略について

2016年8月、カラオケ店舗を展開するシダックスが44店舗を一斉に閉店するとのニュースが話題を呼びました。

カラオケ業界は20年前と比べれば市場規模は半減しており、決して右肩上がりで大きくマーケットが拡大している業界ではありませんでしたが、ここ数年は一人カラオケのブームなどもあり、市場規模はほぼ横ばいとなっております。

スーパー業界でも2016年3月にセブン&アイHDは不採算のイトーヨーカ堂を今後5年で40店舗閉鎖すると発表しました。
この閉鎖店舗への出店を狙っているのがドンキホーテであると言われています。

ドンキホーテは主に総合スーパーや家電量販店の閉鎖店舗へ居抜き出店することで、店舗数を拡大し業績を伸ばしてきました。
カラオケ業界においても、店舗数を拡大し、業績を伸ばしているコシダカHDやシンコーポレーションはこの居抜きでの出店戦略により店舗数を増やしてきています。

「居抜き」での出店に注目

居抜きで出店する際の最大メリットは出店コストが抑えられることです。
コンクリート打ちっぱなしのスケルトン状態から店舗を作ることに比べると、水回りの工事や床、壁などの工事費用がかからないので、大きく費用が異なります。また、もう1つ大きなメリットとして出店スピードがあげられます。

店舗内の造作を工事する期間がなく、譲渡を受けた設備も使用できるので、早期に店舗をオープンすることが可能です。
また、業種にもよりますが、前テナントの顧客を取り込めるというメリットもあります。

しかし居抜きであることのデメリットもあります。
例えば、前テナントの造作・設備を使用するため、店内レイアウトには制限があり、自分のイメージに近い店舗が出来ないこともあるでしょう。

居抜きで造作譲渡を受ける際に注意する4つのポイント

また造作譲渡を受ける際に注意することとして、大きく以下4点があげられます。

1.譲渡を受けた造作や設備の老朽具合や動作状況の確認

設備が老朽化していた場合、オープン後に度々修理が必要になったり、または取り替えるために新しいものを購入したりと余計な費用がかかってしまうことがあり得ます。エアコン、換気扇、冷蔵庫等の設備には特に確認が必要です。

2.リースの有無

リースと知らずに譲渡を受け、オープン後に毎月リース料金の請求をされ、想定外の費用がかかってしまうこともあるので、注意が必要です。

3.譲渡資産の目録作成

譲渡されると思っていたものがなかったといったトラブルになりますので、細かく内容を記載した譲渡資産の目録を書面に残すことが重要です。

4.売主の瑕疵担保責任を免責することが規定されているか否か

譲渡の契約時には壊れていることに気付かなかったものの、実際譲渡を受け使ってみると動かなかったというような場合には、通常であれば売主に対し損害賠償を請求することができます。
しかし売主の瑕疵担保責任を免責することが規定されている場合には、そのようなことはできず、譲渡を受けた買主の負担で修理や買い替えをすることが必要になりますので、契約書の条文は複雑ですが内容をよく理解するようにしましょう。

居抜き物件のデメリット

前テナントの悪いイメージや評判をも引きずってしまい、集客をすることに苦労するということがあります。
また、そもそも好条件の居抜き物件は探すことが難しい、競合が多いということもデメリットと言えるでしょう。
好立地の居抜き物件は誰もが手に入れたい情報だと思います。
しかし好立地であればあるほど、情報は世に出回ることなく次のテナントは決まってしまうでしょう。

このような情報収集力は居抜きでの出店においては非常に重要になります。企業によっては物件情報の収集に対して、非常に多くの人員や時間を割いています。
世に出回る前の居抜き物件の情報にはそれだけの価値があると考えている企業もあるのです。

居抜き物件を活用した出店戦略を支えるもの

冒頭のコシダカHDやドンキホーテには、好立地の居抜き物件情報が集まるだけの企業ブランドと、情報収集力も当然あるでしょう。

仮に居抜き物件の契約ができ、営業を始めたとしても、前テナントと同じ理由で店舗運営が軌道に乗らないかもしれません。
通常であれば前テナントは何か理由があって店舗運営がうまくいかずに閉店に至ったはずです。

前テナントの閉店理由や商圏の競合等の分析やニーズの調査は必須でしょう。
それらに加えて、コシダカHDやドンキホーテなどは時代のニーズを察知した商品構成、サービスメニューを備え、価格設定、店舗運営の効率的かつローコストなオペレーションがあるからこそ、居抜き出店による店舗展開が成功していると考えられます。

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